奥歯のことについて悩んでおり、メールさせて頂きました。半年ほど前に左奥歯(親知らずの前の歯。親知らずは既に抜いています。)が軽い鈍い痛みのようなものが、時々出た為、近所の歯医者さんで診てもらいました。被せていたものを外すと、残っていた歯の部分にひびが入っているのが見つかり(痛みがそこから来ているのかどうか分からないということで)、とりあえず根の治療をしてみることになりました。3ヶ月ほど経った時、急に腫れが出てきて、先生は「これは抜かないとダメだな。」と行って、有無も言わさず抜かれてしまいました。
その後、妊娠していることが分かった為、とりあえず治療はしばらくお休みということになっていました。
残念ながら、その後、流産してしまい、治療を再びはじめようとしたら、先生が、「ブリッジをするので前の歯を2本神経を抜いて、削り、金属を被せます。」と神経を抜こうとしました。私が、「神経を抜くと、歯がもろくなると聞きましたが?」尋ねると、「仕方ないから。」と言われました。結局、健康な歯を2本犠牲にするのもいやで、何をしないまま帰ってきてしまいました。
抜いたところをそのままにしておくのは良くないと思うのですが、見た目にも奥歯3本が銀歯になってしまうのも・・・と思います。入れ歯は大変だと聞きますし、何とかその歯だけ、義歯を埋め込む形にはできないのでしょうか。できたとすれば費用の方はどの位かかるのでしょうか。また、せめて、前の歯を2本使わず、1本だけでブリッジにはできないのでしょうか。
これから先、歯科医療の技術が発達した時を期待して、なるべく、神経を抜いたり、歯を削ったりしたくないのです。今思うと、3ヶ月前に腫れたのも妊娠していたからだったのかもと思い、悶々と悩んでいます。
お忙しい中、本当に申し訳ございませんが、良きアドバイスをお願いします。




かなり、良心的に、取り組んでおられる先生じゃないでしょうか?
歯にひびが入っているにもかかわらず、いきなり抜歯せずに、神経治療を試みたが、噛み合わせの力の負担に耐え切れず、破切がひどくなって来て、感染が起こり(ばい菌の進入)炎症が起こってきたものと考えられます。
特に、奥歯での炎症は、急性になった場合、顎全体が腫れたりする、骨膜炎や蜂巣織炎に発展する可能性が多く的確に、迅速に対応せねばならない事があります。
とにかく、その原因をきれいに取り去る事、抜歯して、その当たりの感染部位(組織など)をきれいに取り去ります。
対応が遅れると、点滴による消炎など全身管理下での処置が必要になるケースもあります。
妊娠初期という事もあり、有無を言わさず抜かれた事は、医学的判断としては正しかったと思いますが、もう少し説明があればよかったのにと思います。


抜いた部分のブリッジですね。ブリッジの場合、欠損している歯にかかる負担を考えて、土台にする歯の数を決めます。土台になる歯にも力学的負担を与えるからです。欠点は、ご指摘のように、健康な歯を土台にする事です。長所は、入れ歯のように抜き差ししないでいい事です。違和感がなく使える事でしょう。
その場合、土台となる歯の神経を抜くかどうかは、土台となる歯の状態により異なります。
通常は、神経処置をした歯は、新陳代謝しないためご指摘どおり、もろくなります。
そのために、金属土台を神経管に埋め込んで強度を保つようにします。
だから、できる限り、神経を取らずに、健康な歯をいかしたまま被せていくように心がけます。
しかし、土台とすべき歯に大きな虫歯があったり、歯周病がかなり進んでいたりして、近い将来、痛みが出てきそうな事が予想される場合は、予め、神経的処置を施してから土台とする事があります。
ブリッジにする場合は、健康な歯を、犠牲にするわけですが、失った物を補う場合、何かを犠牲にしなければならないのは、歯に限った事でないように思うのですが....


御質問の1本だけのブリッジというのは、ありません。ブリッジは橋という意味で、架橋構造をとるため支台となる歯がどうしても必要になります。
無くなった歯に受ける負担を、隣在する歯に分散します。

入れ歯という方法もありますが、これは、歯を失った場所のはぐき(粘膜)と適当な歯に維持装置(針金のような物)を引っかけ歯にも負担を分散させるため、健康な歯を削ったり被せたりする必要のない反面、異物感が大きくなります。

いずれの場合も多少の犠牲を無くして、失った歯を修復する事は、難しいです。



抜いたところをそのままにするのが、もっとも、よくない事です。
理由は、そのままにしておくと、失った部分の隣の歯が、傾いてきます。さらに対合している上の歯が伸びてきて、すれ違った噛み合わせになり、おまけに、そのあたりの噛み合わせが、放置されている間は、まったく噛めないわけで、その分他の歯に負担をかけています。
しばらくすると、負担のかかりすぎた歯にも障害が起こってきます。うまく噛み合わせができないために、顎の関節に負担をかけたり、その結果咀嚼筋群にも無理が来るため、最終的に咀嚼筋群に連動している脊柱起立筋群にも疲労が起こり、慢性的頭痛、肩凝りや、顎関節症、姿勢の悪さを招く事も珍しくありません。
また、きちっとした咀嚼ができないため、消化器系ひいては全身の健康にも影響を及ぼす事になります。
これらの悪影響は、徐々にくるため、気がつきにくく、症状となって現れる頃は、どうにもならない事が多いです。
だから、一刻もはやく、修復され、健康的な咀嚼機能を回復される事をお勧めします。
口は、実は、消化器なんです。胃が悪くなると、腸が悪くなります。口が悪くなると胃腸も変調を来たしひいては、、全身の健康状態に影響を与えています。口は、消化器の始まりなんです。
なんとなく噛めているので、安心されていると思いますが、まったく噛めていない事が多いです。最終的に後に生活の質を極端に悪化させることになります。


その部分だけに入れる入れ歯は、ありませんが。
インプラントという方法があります。顎の骨に人工的な歯根を埋め込んで、その上に歯を作る方j法です。
これは、最も進んだ方法で、夢のような事がいわれておりますが。欠点もあります。
インプラント治療による失敗も多く、裁判になっているケースも多いです。前提として基礎疾患のない事と絶対的なプラークコントロールが必要となります。
成功例ばかりが喧伝され、夢のような宣伝を多く見かけますが。欠点は、下顎骨に負担をかけ、犠牲にするからです。しかも、骨に撃ち込まれた金属製の歯根を生涯いれっぱなしにしておくわけですから。(生涯もてばですが....)慎重にならなればなりません。
また、この方法は、確かな医学的知識と、術後の管理がとても重要になります。
費用は、手術費用や技工物も全て自費となります。
そのわりに、術式は、簡単なため、医学的素養のない先生が、経済効率だけを考えて、インプラントをやりたがります。
実際、大阪大学の先生方が中心になっている、技術習得のための研修では、費用も高いですし1年くらいかかります。一方で、業者の主宰する研修プログラムでは、2日で終了し、費用も格安です。どちらもコースを終了しても、インプラントはすぐに実施できます。私も、いくつかの講習会や研修会に参加したりしましたが、技術そのものは、簡単です。
いいかげんな技術で、ぼったくる歯医者も少なくなく。インプラントを導入したがる先生も多いです。

どうしても、この方法を選択される場合は、慎重の上に慎重になり、十分に説明を聞かれ納得された上で、信頼できる医療機関で、受診されたらいいと思います。
費用は、高いです。1本につき手術費用は上の構造物を含めて数十万円くらいすると
思います。医院によりまちまちです。
ほんだ歯科では、どうしても希望され、プラークコントロールのできる方のみ、外部より信頼できる認定医を招聘して実施するか大学病院を紹介します。
ただし、糖尿病をはじめ、なんらかの基礎疾患を持っておられる方は、できません。
私自身は、インプラント治療は受けたくないので、自分自身したくない事は、患者さんにも、積極的にはすすめていません。

特に若い人は、余命が長いわけですから、自分の歯でも、歯周病をコントロールし、ずーといい状態で持たせていく事は、かなりな知識と努力が必要なわけですから。ましてや、異物を生体に温存している事の長期的影響はうまくいかなかった場合を想定すると、ちょっと懐疑的になります。



おっしゃるとおりですが、抜けっぱなしもよくないです。歯科医療技術の進歩を待っていると、いつの事になるやら?とりあえず、今の技術でできる中から選択されては、いかがですか?

妊娠によって、腫れるのは、妊娠性歯肉炎という生理的な腫れがありますが、この場合は、考えにくいと思います。





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