うちの主人の口の中(ほっぺの裏側)に、こぶのようなものが3か月ほど前からできています(直径1センチ弱)。
痛くもかゆくもないらしいのですが、ものを食べるときなど歯が当たって気になると言います。先生の専門外かもしれませんが、多くの患者さんの中には同じ症状の方もいらしたかと思い、ご相談してみました。
これは何だ思われますか。また、すぐに専門の先生に診ていただいたほうかよいのか、教えてください。


実際の状態を見ずに、診断するのは、とても難しいのですが、一般的な可能性について確率の高そうな順番に述べていきます。
あくまでも、書かれている範囲のヒントからの推理です。
この他にも可能性がありますが、痛くないという事から次のような可能性が考えられます。

@肉芽組織の疑い
口の中に、不適切な被せがあったりすると、よく、ほっぺたを噛んでしまいます。
ほっぺたを噛むと、そこに傷ができてしまいます。これを咬傷(こうしょう)と呼ぶのですが、咬傷を繰り返すうちに、自ら、頬粘膜細胞にその傷を修復しようとする、現象が起こります。つまり、組織がその傷を取り巻き、覆い尽くそうとします。これは、肉芽組織と呼ばれるもので、咬傷を中心になんとなくぐりぐりとした、組織が隆起してきます。一般には、痛くなく気にならないのですが、ある程度の大きさになると、気になってきます。
この場合は、ほっぺたを、噛む原因になっているもの、不良な被せなどをやり変えたり、噛み合わせの不備などをチェックし、修復すれば、自然消滅します。

A悪性腫瘍(口腔癌)の疑い
口腔癌の疑いですが、我が国の発生率は、全癌の1〜2%程度で低いです。また、日本人は、舌癌や、歯肉癌が多いのに対し、欧米やアジアでは、口唇や頬粘膜に多いです。男性は、女性より2倍多く、年齢的には、40〜70才に多いです。最近は、20代や30代の増加の傾向が見られています。
いくつかの、パターンがあります。
最初は、肉芽型と呼ばれ、前述の@の場合と区別がつきにくいです。やがて、潰瘍型、膨隆型、白班型、乳頭型などにバリエーションは多いです。@との、簡単な違いは、おおむね、癌は、急速な成長はありません。
3カ月前から、気づかれたそうですか。それより前からあったのかどうかが問題です。おおむね、癌は、痛くなく進行します。進行していくと見た目に汚いのに、その割に痛くないとか、言う場合は、要注意です。
ほんだ歯科でも、例年1〜2名は、発見しています。

B良性腫瘍(乳頭腫)
これは、良性の腫瘍です。可能性がかなり低いのですが、茎があるような感じ、有茎性の腫瘍で、小豆くらいから大きいもので、2〜3センチになります。表面の色は、正常で、カリフラワーや、乳頭のような形をしているので、比較的見ただけで分かります。年齢的には、高齢者に多いです。

C血管腫
血管組織の増殖によるもので、腫瘍と似ているため、過誤腫とか呼ばれます。
これは、大概子供の時から存在し、成長とともに、増大します。暗赤色で、押すと退色するのが特徴です。

このほかにも、アフター性口内炎やその他、粘膜の腫れる一般的な病気があるのですがたいてい、痛みを伴います。

最終的には、@の可能性を疑いますがAの場合も捨て切れず、一応私なら、然るべき上級機関に転送の上、鑑別を依頼します。もし、Aの可能性があるなら、初期の頃でしょうからほとんど、問題なく治癒する可能性があります。
口腔の癌は遅れると、転移しやすく、5年生存率も極端に低くなります。

アドバイスです。
なるべく早い時機に、大学病院や、歯科口腔外科を標榜する医院への受診と、精密検査を受けられることをお勧めします。



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