口呼吸の口臭の因果関係について

皆さんは、人である前に、哺乳類でもあるわけですが・・・・・
哺乳類の世界では、口臭はありません。
例外的に、ペット化した犬や猫では、問題になります。人間と同じように、歯周病に陥るからです。
しかしそれも、動物病院で歯周治療を受けると治ります。
どうして、哺乳類である人にだけ口臭が存在するのでしょう?

それは、人間以外の哺乳類は口呼吸をしないからなんです。
しゃべる事のできる唯一の哺乳類が人、であるわけです。このしゃべるという行為において、始めて口呼吸が可能になります。

人は口呼吸のせいで、他の哺乳類にはない病気を発症します。

犬や猫の病気に、喉頭炎や咽頭炎、上部気道炎のような、いわゆる風邪症候群というような病気はめったに起こりません。

でも、通常健康な人では、会話以外の場合は殆ど他の動物と同じように鼻呼吸をしています。
最近になって、歯列不正やしつけの問題(昔は、口で呼吸する事や、口を開けっぱなしでいることは、はしたない事とされていました)等、色々な理由から、日常的に口呼吸する人が増加してきました。

実は、この口呼吸こそが、口臭を招いています。

いくら口臭がきつい人でも、日常生活で、口臭がまったくしない瞬間があります。食事をしている時と、水を飲むとき時です。口に物を入れているときは、口呼吸していないからです。

そのことから、口呼吸は、口臭にとって最大の原因になっている事がわかります。

口呼吸の恐怖について

私の治療の最終目標は、口臭撲滅と同時に、口呼吸という悪癖の撲滅があります。
口呼吸は、実は、あなた方が考えている以上に恐ろしいものなのです。
それを表にして見ました。

1 口呼吸により、口腔内免疫力は極端にダウンする
口呼吸を行なうと、舌の付け根にある舌扁桃(免疫細胞が集合している場所)や、口の奥に集合しているリンパ組織集団(咽頭扁桃、耳管扁桃、口蓋扁桃、咽頭小扁桃、)の全てに乾燥が起こります。ウイルスにとっては、最も好都合な条件です。
したがって、容易にインフルエンザなどの侵襲を受けます。

(のどから出る、白い臭い物質の秘密)
よく、口臭で悩む患者さんは、舌の奥から出る、不気味な白い臭い物質の存在に気がつき、口臭の原因ではないかと言う質問を行います。・・・
実は、このような人の多くは、口呼吸常習者です。上記の5つのリンパ組織は、外界からの細菌やウイルスからの侵略に備えて、粘液とともに、常に免疫細胞を出しています。
口呼吸の人は、汚染物質をより多く口から取り込むために、この巨大な免疫組織群でブロックされ、結果として炎症産物である、バクテリアの死骸や免疫細胞の死骸である、奇妙な臭い匂いのする白い物質(膿状物質)を大量に作ることになり、おまけに乾燥状態になっているので舌の奥に貼りついたままになっています。
これが、臭い白い物体の正体です。・・しかし、これが元で、口臭が起こることはありません。
2 血液中の抵抗力のダウン
口呼吸を繰り返すと、風邪をひかないまでも、いつもウイルスに暴露されている為に、血液中の免疫細胞が減少します。このことは、体全体の免疫力の低下を招き全体的な抵抗力の低下につながって行きます。
3 口の中の抵抗力のダウン
口の中の唾液が乾燥して行く為に、唾液中に含まれている免疫成分がまったく働かなくなります。其の為に、舌苔の付着や口の中の細菌のバランスに変化が起こります。
結果として、菌交代現象が発生します。(悪性の菌が良性の菌を駆逐し、カンディダなどの、普段は少ないカビ類の繁殖を容易にする。
口腔内粘膜自体の抵抗力もダウンし、容易に、口内炎などが出来やすくなる。
4 味覚がおかしくなる
口呼吸によって舌は乾燥状態に陥り、舌苔の付着のみならず、味覚細胞にも影響を与え、味覚が鈍ります。
5 いびきの原因になるばかりか、突然死や、運転時居眠りの原因といわれる睡眠時無呼吸症候群の原因になる。

したがって、口呼吸を矯正しない限り、いかに、口臭の原因を取り除いたとしても口臭が解決できない事もありえる訳です。



日本人に増加している口呼吸
どうして口呼吸するようになったか?

私が小さい頃、「食事中に、ペチャックチャしゃべるな」とか「口を、ポカーンとあけるな!」とか、おじいちゃんや、おばあちゃんに叱られたものです。
最近は、食事はしゃべりながら楽しく、、と、なりました。口をあけていることに対して、しつけとして、あまり、やかましく言わなくなったように思います。
日本の伝統的な習慣や美徳として食事中はしゃべらず、決して口の中を見せては行けないというような作法があったように思いますが、いつから変わっていったのでしょうね。
町を歩いていても、口をポカーンとあけた、若い人を多く見かけます。

世界的に見ても、日本人は、口呼吸する人が多いという報告もあります。

理由としては、しつけや文化の急変だけでなく、食生活の変化があると思います。
最近の若い人は、殆どの人に歯列不正が見られ、歯の数と顎の発達にアンバランスが生じています。極端な場合、口を閉じようとしても、閉じることのできない人がいたりします。

このような、文化的価値観の変化と食生活の変化により、口呼吸常習者が多くなっているのではないでしょうか?

他の民族に比べて、日本人に、口呼吸が多い事の理由に、日本人固有の乳幼児のしつけの問題を指摘する報告もあります。

日本では、離乳を1歳前後で始めて、離乳直後から、哺乳行為を禁止させ、おしゃぶりもさせないようにする、という独特の保育法が口呼吸を起こさせるという報告があります。
哺乳中の赤ちゃんは、口呼吸が出来ず、他の動物と同様に鼻呼吸しかできません。

離乳時期が早いと、直ちに口呼吸に切り替わると言われています。


早過ぎる哺乳行動の禁止が、口呼吸の習慣を作りだし、後々の口腔機能の発達の未熟さ、しつけの悪さが、日本人型口呼吸を生み出しているように思います。

口呼吸は矯正できるのか?

では、口臭の最大の原因である悪癖「口呼吸」の習慣は矯正できるのでしょうか?
多くの、口呼吸患者さんに「鼻呼吸をしてください」というと、鼻アレルギーがあってできません。」
「苦しくてできません」とい答えが返ってきます。
あるいは、口臭のどんな本にも「口呼吸してはいけない」と書いてあります。
あるいは、先生から、口呼吸をなるべくしないように指導されると思います。

では、どうしたら、口呼吸が防止できるか、改善できるかという方法ですが、それについては、口呼吸から鼻呼吸への矯正方法はまったく記載もないし、具体的な方法について指導もされません。

これでは、患者は、困る訳です。

また、患者側にも誤解があります。鼻呼吸はしんどい、酸素不足になる。苦しい・・という訴えです。

これは、まったく根拠のないことです。実際には、そんな人でも自然に苦痛なく鼻呼吸をしているのです。
食事をしている時や、飲み物を飲む時です。

苦しく思うのは、まったく違う習慣を意識するからです。むしろ、口呼吸の酸素交換率は鼻呼吸の酸素交換率よりも落ちる訳ですから、口呼吸を鼻呼吸に変えたからといって決して酸素不足になったりしません。なんとなく、苦しく思ったり、しんどく思うのは、ちょうど右利きの人が左の手で字を書くような感じです。意識するとある種のストレスを感じます。

しかし、私の提唱する、自律的唾液分泌機能促進訓練・舌機能促進訓練法(別項参照)では、無意識に自然に、口呼吸から鼻呼吸への転換が可能です。是非試してください。