今、仲のいい高校2年生の女の子から、相談を受けています。彼女は、ここ半年前「口の中が生ゴミ臭い。通学バスの中でも匂いが充満するから、息を止めていないといけない。」と、言っていました。その子は高校の1年生のとき、親知らずが炎症をおこして、歯医者に治療に通っていたことがあります。そのため親も本人もそれが原因だと思って、ずっと歯医者に通っています。

でも、一向に良くなるきざしはなく、病院の先生からも「異常はありません。」と、言われたそうです。そこで今日、彼女からじっくり話を聞くと、確かに歯は全部治療してもらい、痛いところはなく、歯茎も見たところすでに炎症を起こしていないそうです。

匂いのする場所は「歯茎」ではなく「口の中の唾液(もしくは胃液)」で、「口の左側(前、親知らずが炎症を起こした場所)から匂いがしている気がする。」そうです。
口の中を見せてもらいました。舌は真っ白で、お医者さんにも「ああ、結構荒れているね。」といわれたそうです。

それ以外にも原因はいろいろ考えられます。彼女は、高校に入ってから、周りの人と肌があわず、
学校も休みがちでした。また、心臓が少し弱く、検査のために病院に通う日が続き、いらいらしていました。

また、偏食気味で生活もこのところ不規則でした。

「カウンセリングを受けるか、内科に行ったら?」と、言いましたが彼女も、彼女の両親も、かなりの頑固者で、私がきちんと原因には何が考えられて、どのようにするべきなのか、理論付けて話をしなければ、納得してくれません。困って、解決策を探そうとインターネットで調べていたところです。先生のご意見、そして、これから彼女の症状に対してどう対処を続けていくべきかアドバイスをください。お願いします。
 

このケースは、思春期の女性によく発生する口臭で、しばしば、不登校やひきこもりなどをひき起こす事があります。
この年代の「口臭外来」に来院される患者さんの、大半は、不登校・人間不信・などの精神的ダメージが大きいことが特徴になっています。
早期での対応と、専門家によるカウセリングによる、精神的ケアーも必要と思います。

> でも、一向に良くなるきざしはなく、病院の先生からも「異常はありません。」と、言われたそうです。

このようなケースは、口腔内の状態や、内科的データーだけを見ると、一見正常でなんの原因も見いだせないのがが特徴です。

> 匂いのする場所は「歯茎」ではなく「口の中の唾液(もしくは胃液)」で、「口の左側(前、親知らずが炎症を起こした場所)から匂いがしている気がする。」そうです。

口臭は、口腔内局所の問題(歯石や歯茎の状態、歯列、補綴物)と、口腔内環境の恒常性の維持についての考察が必要になります。
前者だけを問題にすると、ほとんど、歯科でも問題にされず、治療法についてもわからないと言うことになり、内科的診断においても同様の扱いを受け、医療機関を点々とする結果になります。

口腔内の恒常性の維持(常に一定健康的な環境に保つ作用)は、唾液によって行なわれています。
唾液の恒常性の維持は、健康な自律神経系の働きによって行なわれます。
したがって、自律神経系の調和の取れた働きが狂ってくると、口腔内の恒常性の維持が困難になり、口腔内はその時の体調や、精神状態により自浄性を失い、口臭を引き起こします。
多くの場合、口臭以外の様々な不特定な症状を呈している事が多く、容易に判断できます。
原因不明の頭痛や吐き気、下痢と便秘、食欲不振など、様々な症状が不定愁訴として訴える事が多いです。

> 口の中を見せてもらいました。舌は真っ白で、お医者さんにも「ああ、結構荒れているね。」といわれたそうです。

自律神経失調に陥ると、口腔内の本来持っている免疫力もダウンする為に、体調に応じて口腔内は不潔に成り、舌苔が付着しやすくなり、ときに、白苔の過剰な付着があり、口臭もひどくなります。口腔内は、乾燥状態が続き、唾液もネバネバしたものになります。

>それ以外にも原因はいろいろ考えられます。彼女は、高校に入ってから、周りの人と肌があわず、学校も休みがちでした。また、心臓が少し弱く、検査のために病院に通う日が続き、いらいらしていました。

口臭は、自己臭に発展し、その事がさらに、精神的ストレスをひきおこし、自律神経系に悪影響を与えどんどん悪化して行きます。精神的に追い詰められ、自閉的になっていったり、対人恐怖症になることも観察されます。

> これから彼女の症状に対してどう対処を続けていくべきかアドバイスをください。お願いします。

まず、このような問題に詳しい「口臭外来」などの専門の治療とカウセリングが必要です。
多くの場合は、直接的原因の解決(歯科的治療)と並行して、日常生活の調査により、生活改善。食事治療とあわせてカウセリングによる精神的ケアーにより解決します。

この年代は、第2次性徴期で、自律神経系の成長と、精神的成長、肉体の成長のアンバランスに加え、子供時代のライフスタイルからおとなへのライフスタイルの転換期からくる生活習慣の乱れによって発生すると考えられています。

通常、多かれ少なかれ同世代の人には、同様の傾向があるのですが、大半は一時的なもので、成長に伴いバランスが取れていきますが。
口臭などの問題で、対人関係のつまづきから、精神的問題に発展すると後々まで影響が残る事があり、迅速で慎重な対応が必要であると思います。