唾液と口臭の密接な関係

口臭患者さんの共通した訴えには、「口の中がネバネバする」「口の中が乾燥する」「口の中が熱い感じがする」
というものが多いです。
このことは、口臭が、歯石や歯垢等の他に唾液と密接に関係していることを示唆しています。

従来の、口臭に関する参考書や発表にも、「唾液の乾燥」という表現が多く出てきます。
しかし、患者さんも、口臭を治療する側も気づいていることなのに、それ以上の考察や、唾液の分泌量コントロールにアプローチする治療の方法について、ほとんど触れられていないのはどうしてでしょう?

この問題を考察することは、他覚的口臭のみならず、「自覚的口臭」患者に対する根本的治療法の発見に結びつくかもしれません。

ひょっとすると。いくつかの「口臭外来」や「内科」挙句の果てに「精神科」へと、さまよっている人たちに対して、福音となるかも知れないのです。少なくとも、ほんだ歯科でのとりくみでは、「自臭症」の人たちの治療に大きな成果を生んでいます。

さらに、ひょっとすると。全国にいらっしゃる、どの科らも見放された、「自覚的口臭」患者の皆さんも、自宅で、ちょっとした訓練をするだけで、嘘みたいに治ってしまうことがあるかも知れません。
ほんだ歯科では、それまで20年苦しまれた自臭症患者の方が、たった1回の指導で、うそのように改善してしまったケースがあります。(その方は、普通方よりさらに唾液の出にくい、甲状腺機能障害を持つ患者さんでした)

しかしその前に、「唾液」とは何であるかを良く知っておく必要があります。


口が乾燥するとどうして口臭がする


通常の生活では、会話時における人の口臭は気になりませんが、起床時や、緊張した時には、自分の口臭が気になり、思わずハーハーして、自分で臭いをかいでみたりされたことがあると思います。

つまり、健康な人でも、起床時とか緊張時のように口の中が乾いた状態では、自覚的な口臭を認めたり、あるいは一時的に他覚的口臭へと発展したりします。

さらに老人性口臭と言うのがあります。老人固有の生理的口臭です。老人性口臭は、口腔内の細菌の変化と唾液分泌能の低下によって起こります。

口腔内乾燥は唾液分泌の不足から生じるものですが、では、唾液が不足するとどうして、口臭がするのでしょう。

熱いフライパンとソースと水?

熱いフライパンに少量のソースを延ばしてみると、一瞬にして揮発し、鼻をつくようなソースの臭いがします。そこに新鮮なソースを多く注ぎ込んでみると、ソースの匂いはするものの、鼻をつくような臭いは無くなります。

熱いフライパンに、少量のお水を延ばしてみましょう。一瞬、蒸気臭い水っぽい臭いがします。でも、それほど不快ではありません。すぐに、新鮮な水を多く注ぎ込んでみると、ほとんど臭わないです。

これは、口腔内乾燥が起こったときの、口臭のある人と無い人の、わかりやすく説明のつくモデルです。そして、日ごろよく体験するこのような出来事に、口臭抑制へのヒントがあります。


ここで、熱いフライパンを舌、ソースを口臭ある人の唾液、水を健康な人の唾液と仮定してみましょう。

両方とも、液体量が少ないと臭いがきつくなり、そこに、流れる液体が大量に来ると、臭いは少なくなることがわかります。

しかし液体の質によっては、たとえ液体量をふやしても、その液体固有の匂いがすることが理解できます。

そこから、舌の上に唾液の流れる層があるうちは、いずれにせよ口臭は抑制される、ということが類推できます。

このことは、たとえ、歯周病で口臭のひどい人でも、氷水を口に含ませてみると、口臭が一時的に消えることからもわかります。

歯周病や他の要因による口臭がある患者さんで、唾液内に含まれ、口臭を引き起こす、組織由来の蛋白質や過剰な細菌類を、治療によってコントロールし、健康な唾液にした後で、舌の上を常に流れる唾液の層を作ることに成功すれば、、、
他覚的口臭はもちろんですが、自覚的口臭も克服できるはずです。あるいは、健康な人の不快な起床時口臭や、緊張時口臭も自分でコントロールできるようになるはずです。

実は、健康な人の口には、起床時や、緊張時を除いて、このシステムがあるのです。

これが、自臭症の謎に迫る鍵だと思います。

次の項では、そのような観点から、唾液についてさらに勉強してください。