舌を診るということ
舌は体のかがみ
口臭は体の悲鳴

口臭と舌の関係は、口臭を扱う書籍には必ず出てくるし、口臭でお悩みの患者さんでも、よく知っておられます。
しかしながら、舌と口臭を結び付けて行く治療体系についての記載は、歯垢を取ること以外は皆無に近い実態です。
西洋医学的、あるいは、歯科医学的、歯科口腔外科的扱いでは、舌の病変は局所的な治療が主体になります。

しかし、これは、口臭治療に即した理論や、治療体系ではありません。

一方、大正時代まで日本の医科の主流であり、現在中華人民共和国においても成果を上げている東洋医学においては、舌の考察は診断上大きな意義を占めています。さらに、口臭と密接に関連する理論と考察には、口臭治療を行う場合学ぶべき点が多いです。

そういう意味で、舌は現在の体の状態を知る鏡であるし、口臭は時に体の変調の叫びでもあるのです。



東洋医学的舌診
舌や舌苔から何がわかるか?

東洋医学的では、病的状態の事を「証」といいます。
さらに、「証」を、いくつかの体系に分類し、体調や基礎新患と関連させた分類を行なって行きます。これを「弁証論治」と呼んでいます。

「気・血・水」「陰・陽・虚・実・表・裏・寒・熱」等の分類で舌を見る事によりその人の、年齢における免疫力の衰えや崩れを分析していきます。さらに専門的には、他のファクターも組み合わせて、診断していきます。

この長い経験則と集積されたデーターは、西洋医学とは、違った観点から興味深い点があり、西洋医学の知見と重ね合わせると、「口臭専門治療」に、大いに役に立ちます。

確固たる診断方法・治療方針が定まっていない中で、この東洋医学的知見は「口臭」で悩む患者さんにとっても、治療する側にとっても興味深く、参考になります。

特に、口臭に関わりのある舌の状態と、舌苔の分類は診断の際にとても役に立ちます。
正常な健康な舌とは
正常な舌は、形は大きすぎず小さすぎず。
厚みも厚すぎず薄過ぎず。
色は、薄い赤色ですが、決して鮮やかなピンク色ではありません。
舌の真中あたりから、後ろにかけて、うっすらと白い苔が均等に存在します。
舌の表面に、細かい横皺(横紋)や、点々とした発赤がない。
舌を裏返すと2本の明瞭な静脈(舌静脈)がみえます。
口臭との関わりでは、起床時口臭、緊張時口臭があります。
舌苔はうっすらと白く均等にあるのが正常
舌苔は、少しはあるのが普通です。


舌苔とは何か?
舌苔の持つ意義―口臭との関わり



舌苔(ぜったい)とは、舌の表面に白色、褐色、黒色の苔状に見えるものをいいます。健康な人の舌には上記の写真のようにうっすらと、舌の奥のほうに均一に存在します。途切れがなく、裂け目や、ばらつきのないことが特徴です。付着のしかたは、健康な人でも体調により量や色が変化することがあります。
通常の付着量では、口臭に影響を与えません。

しかし、舌苔が分厚くなって、上記のような適当量に復帰しないほどの量になってくると、違和感や味覚異常が出たり、また、口臭の原因になったりします。

一般に、若年者には少なく、中・高年者では多く、歯石の付着や歯周病の進行状態、加齢に関連して発生します。

舌苔はどのようにして出来るか。
口の中が乾燥状態になったり、不衛生になったり、風邪をひいたりして体力が衰え、免疫力が低下したり、あるいは唾液量が減少する、などによって、舌の表面構造を形成するザラザラとした微細な乳頭(糸状乳頭)の間に、たべかす等が停滞します。
さらに、口腔内の微生物やカビ、舌の剥離した上皮、白血球、リンパ球などが停滞し、定着して舌苔が出来ます。

そのような原因として考えられることは、局所的には(口の中に原因がある場合)は、口の中の自浄作用の低下です。

ブラッシングの不備。口呼吸(鼻が詰まっていたり、耳鼻科的疾患がある時も、口呼吸になりますし、歯並びが悪いときも口呼吸になります。また、特殊なケースでは楽器演奏者など)。喫煙。過度の刺激物の摂取。加齢による唾液分泌量の減少。ストレスによる唾液分泌量の減少。等があります。

全身的な原因として、熱性疾患、糖尿病、シェーグレン症候群や自律神経失調症などによる唾液分泌機能低下からくる口腔乾燥。胃、十二指腸潰瘍、悪性腫瘍など。また、他の基礎疾患の治療中で、長期薬物服用中などが、あります。

舌苔の不思議
口臭防止になくてはならない舌苔


健康な人の、舌苔を観察をしてみますと、興味深いことに気が付きます。
舌苔は、1日のあいだでも、付着の状態が刻々と変化してます。
食事直後はうつくしく、その後徐々に、うっすらと付着し、疲れてきた時や、起床時はやや白っぽいです。
風邪等をひいたり、薬を飲んだりしますと、白味はさらにまします。

逆に、「自臭症」の患者さんは、必要以上に舌苔をとられているので、とてもきれいです。
きれいすぎる舌の持ち主は、逆に口臭を感じるようになります。
舌苔のまったくない、美しすぎるピンク色の舌は、かえって不自然なんです。
ちょうど、熱いフライパンのようなものです。むき出しの舌は、水分を保持できなくなり、乾燥を起こし、舌の熱により揮発が進み、口腔内乾燥はさらに進む結果になるのだと思います。

適度な量の舌苔は、水分の保持と、健全なバクテリアの層を築き、新陳代謝していく若い細胞や味蕾を保護している訳です。ちょうど適度な歯周菌が、歯周の周りにいることによって、歯の周りの溝からの悪性の菌の侵入を防いでいるのに似ています。歯周菌も舌苔も健全に生きて行く為には必要なものなんです。ただ、多すぎることが問題になるわけです。舌苔は、多すぎても、また少なすぎても口臭を引き起こしています。

この概念を、舌にかけては西洋医学より、はるかに観察と洞察を行なってきた東洋医学では、重要視しています。

口臭を引き起こす舌苔と、病気や体調の関係


口臭との関連から、過剰な舌苔ができる様子と、東洋医学的解釈及び西洋医学的病変との相関関係を表にしてみました。舌を観察する時、両方の医学的体系を元にした観察を行ない、問診を行い、全身的状態を観察し、また、生活記録から、過剰な舌苔が付着する背景を類推する事が出来ます。

参考写真 所見 東洋医学的・西洋医学的解釈
舌苔が無く、てかてか赤い 胃腸に問題がある可能性。
慢性炎症
発熱
炎症
全体的に白く分厚い
粉がふいた感じ
冷え性、貧血
水分過剰
紫っぽい
やや、薄く青みを帯びている
血管循環障害
血行不良
舌苔がなく、一見美しいが
明るい赤みを帯びている
高血圧
急性の熱性疾患
深みを帯びた青い感じ 冷え性
チアノーゼ
黒い舌苔
(黒毛舌)
抗生物質の連用
慢性肥厚性カンジダ症
表面が少し白く粘性を帯びている
舌が、厚い
鮮やかな、レース状になることもある。
ヒリヒリ感を訴える事が多い
ステロイドの服用者
免疫力の低下
菌交代現象


このように、口臭で悩む皆さんは、口臭には舌苔が悪いと思って、舌苔を取るために努力されるのですが、実は、舌苔が付着している時は、体の内部に問題がある事が多いのです。
この体の内部的問題を解決しない限り、一時的に舌苔を取ったとしても、すぐに再びついてきます。
いたちの追いかけっこのような状態になります。
よく、「体質」じゃないかと思われがちですが、本来の体質ではなくて、病的あるいは、免疫力が落ちるなど、何らかの要因を抱えている事が多いのです。」