質問があるんですが、中学生ぐらいの頃から親知らずが上下左右の奥に合計4本生えてきて、時々すごく腫れて痛むので今年の冬に右下のものを抜きました。それでしばらくは腫れがおさまらなくて大変だったんですが、今度は左下が痛くなってきてしまいました。やっぱり、親知らずは全部抜いちゃったほうがいいんでしょうか? それと、どうして親知らずが生えるんですか?(東京都.K.K.さん)




親知らずを抜いた方がいいのかどうかについて考える前に、親知らずが、正常に生えない理由と弊害について考える必要があります。

(親知らずがちゃんと生えない理由)

親知らずは、永久歯の中で最も遅く生える歯です。(18〜20歳くらいに生えます)傾いて生えたり、生えないで顎の骨の中に埋まっていたりする事が多く、正常に機能している人は、20%以下であると言われています。

原因は、現在の食生活の変化により、柔らかい食物中心の食生活により、顎の発達と歯の数のアンバランスにより、親知らずの生えるスペースが不足している事が、原因と考えられます。

(異常な親知らずがもたらす弊害)

1.親知らずの痛みや、腫れ


これは、智歯周囲炎と呼ばれるもので、親知らずの生えるスペースがないために、親知らずの一部、または、全部が歯肉で覆われそこにばい菌が入って、歯茎や骨にまで炎症が、波及し、しばしば、顔全体が腫れ上がったり、全身症状に移行する事もあります。

こういう場合、上にも、親知らずが異常な状態で、生えている事が多く。咬むと、下の親知らずを、覆っている炎症を起こしている歯肉を噛む事となったり、斜めに生えている場合ですと、その隙間に食べたものを押し込む結果となり、炎症はさらにひどいものになります。

痛くなったり治ったりするケースでは、それは、自己の体力調子の変動により起こるわけですから、いずれ、大きな炎症に発展する事が多いです。あるいは、慢性化していく事があります。

正常に生えてくる場合では、生えてくる事による生理的な痛みがある事があり、これは、異常では、ありません。

2.歯並びをおかしくする

親知らずの生えようとする力(崩出力)は、意外と大きくスペースがないのにもかかわらず、生えようとします。結果として、それより前にある歯は、側方から力を受ける結果となり、特に、根っこが単純で1本しかないような、前歯では、両方から力がかかるため、ねじれてきたり(モーメント力)くさび効果でせりあがってきたり、倒れてしまったりして、全体の歯並びを大きく、狂わせる結果となります。その結果、親知らずは、中途半端に生えてきて噛めないし、しかも全体の歯並びが、おかしいと言う結果になります。最近は、このような人を多く見かけます。

3.親知らず周辺の不潔による虫歯や
歯周性疾患のリスクファクターになる

親知らずが不正な状態で生えると、歯ブラシが届かないために、いつもその部分は、細菌学的に不潔な状態となり(不潔域)、親知らず周辺部は、ばい菌製造庫になり、特に最も重要な手前の歯は、たいてい虫歯におかされますし、お口全体の衛生状態は、きわめて悪くなる結果、虫歯や歯周性疾患(歯槽膿漏)になりやすい状態となります。

4.口臭の原因

お口の中が不衛生になるため、ばい菌の温床となり、口臭の原因になります。

5.顎関節症を招く

最近非常に多く増えてきた病気です。ほんだ歯科では、ほとんど毎日顎関節症の患者さんが来られますが。そのほとんどのケースで、親知らずが関与しています。
親知らずの異常な生え方によって、歯並びに不備から、おかしい噛み合わせが習慣的となり、顎の関節に負荷がかかり、最終的に口を開けると顎が痛い、または、重症例なると口が開けれなくなる事もあります。

6.慢性的な頭痛、や肩凝り

顎関節症ほどひどくないケースで、顎関節症予備軍です。噛み合わせの不備から、噛み合わせに関与する筋肉群の骨の付着部分に慢性的な負担がかかり、偏頭痛、や、首のだるさ、その延長の筋肉群の疲労から肩凝り、腰痛などが、慢性化します。

ほんだ歯科では、親知らずを抜歯後噛み合わせを調整した結果、永年の慢性的な頭痛や、肩凝りが消失した患者さんが、いらっしゃいます。内科的、形成外科的に肩凝りや、腰痛の治療を受けていても改善しなかった患者さんの一部の人に、親知らずが関与している事もあります。

7.ふんばれない

親知らずがあると。奥歯での十分な噛みあわせができにくくなります。その結果、ふんばれないと言う事になります。特にこれは、スポーツをする方や、力仕事をする場合にとっては、十分な力が発揮できないと言う結果になります。


なんか、悪い事ずくめの親知らずですが、抜かない方が良い場合もあります。

(親知らずを抜かない方がいい場合)

1.正常に生えて機能している場合

当たり前ですよね。ちゃんと生えて噛めている場合は、他の歯と同様、虫歯になっても保存に努めなければなりません。

2.奥歯が、抜けたり、欠損になっている場合。

治療により、奥歯を喪失した場合。親知らずを抜いて移植できます。自家移植と呼ばれているものです。年齢が若い場合、(30歳くらいまで)かなり有効です。ほんだ歯科でも、毎年1人くらいは、このように、親知らずが役立つケースがあります。
また、すぐ手前の奥歯が、抜けたり、治療により抜歯した場合、親知らずが移動してきたり、部分矯正により、移動させ、使用できます。あるいは、ブリッジとしての土台としての役割にもなります。こういうケースは、たくさんあります。

3.高齢者や基礎疾患のあるリスク患者の場合。

親知らずの抜歯は、小手術に分類され、解剖学的にも親知らずのすぐ下に重要な血管や太い神経管が位置しているため、術式は、かなり熟練を要しますし、抜歯によるダメージを考えると高齢者やリスク患者の場合は、口腔外科医と相談のうえ、慎重な対応が必要かと思います


抜いた方がいいかどうかの結論

親知らずの抜歯は、緊急時を除き、他の抜歯と違い、いくつかのリスクを抱えています。しばしば、一時的な、顎の麻痺を起こしたり、抜歯そのものによる身体的ダメージがあります。そのリスクと抜歯によってもたらされる恩恵との、バランスシートを考えた上でで、検討される事だと思います。

顎関節症や、矯正的知識、全身管理、など、総合的知識と理解のある経験ある専門医に相談されればいいかと思います。抜歯後の術後感染の防止や、噛み合わせの調整など、アフターケアーも考えなければいけないと思います。





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