今週の日曜日に下の左の親知らずを抜いたのですが、翌日の月曜日に右頬が腫れ、体が熱っぽくなり、更に、ここが問題なのですが、口を開けようとすると、左顎、頬のあたりが痛くなり、物が食べづらい状況となりました。

歯抜く際、ミッシと音がしたので、顎等にひびなどが入って、痛むのではないかと思い、歯医者に行ったのですが、歯医者の言うことには、下顎は頑丈なので、歯を抜く際の顎にひび等の問題が起こることはなく、顎の痛みは、食事をちゃんとし、薬をのみ、安静にしていれば、徐々に直るとのことでした。

ところが、きょうの金曜日も依然として、口を開けようとすると痛みが走ります。
本当に直るか心配で、メールを差し上げたものです。

親知らずを抜いた場合、口をあけられないような痛みはよく起こるのでしょうか。

整形外科に見てもらった方がいいのでしょうか。

>翌日の月曜日に右頬が腫れ、体が熱っぽくなり、更に、ここが問題なのですが、
口を開けようとすると、左顎、頬のあたりが痛くなり、物が食べづらい状況となりました。


左の親知らずを抜いて、右頬が腫れるというケースは、経験した事がありません。

しかし、親知らずの抜歯は、親知らずに状態(顎の骨の中にあるケースなど)により、小手術に分類されます。
口腔内は、おそらく、あらゆる臓器の中で、最も多くの種類と多数の微生物が常にいます。肛門よりも微生物学的レベルでは、細菌の数や種類は多いのです。
そのような環境の中で、歯肉の切開や、顎骨を削ったり、親知らずを骨の中で切断したり、縫ったりします。
術後も患部は、細菌学的には、非常に条件の悪い中に暴露されています。
また、しばしば、抜歯時に長時間、お口を最大限に開きっぱなしという事になります。当然顎関節に一時的な負担を強いる事になります。

このような条件では、術後絶えず口腔内の細菌が、抜歯窩に流入します。もし感染して骨膜炎や、敗血症、蜂窩織炎、心内膜炎などの感染症を発症すればとんでもない事になります。一命を落とすかもしれません。全身に波及する事があります。
そこで、自然状態では、からだの免疫機構が働きます。すなわち、その部位に、大量の血液が集中し白血球や免疫細胞を放出して、これらの細菌と戦う訳です。(炎症といいます。)その結果、患部を中心に血液や漿液の集中による腫脹と、炎症の結果としての痛みと発熱、が起こります。
また、しばしば、開口障害などの機能障害が起こります。
痛くて腫れて、熱が出て、機能障害があるため、結果として、じっとして安静をはからざるを得なくなります。その結果、体力は温存され免疫力と回復力は増強されます。その間に治癒はどんどん進む訳です。
こうして、治癒するまでの約1週間、患部は、腫れて、痛くて熱を持つ事になります。

このような術後の感染を防ぎ、腫れや痛みや発熱、機能障害と言った、自然の免疫作用である、炎症に伴う不快症状を取り除き、2次的な術後感染を防止する目的で、抗生物質や消炎剤などにより、術後の感染防御コントロールを行ないます。
したがって、術後は安静を図り、飲むように指示された薬は、たとえ痛くなくても、腫れなくても、最後まで決められた間隔と服用量を守って飲んでください。腫れや痛みや発熱を最小限に押さえる事が出来ます。

当然、傷が治癒するまでの間(おおむね1週間ほど)は、口が開けにくい、食事がしにくいなどの開口障害が起こる事がありますが、これは、手術すれば治癒するまでの間、機能障害(手足が動かしにくいなど)が出るのと同じ術後の炎症によるものです。
抜歯部位の治癒に伴い必ず、回復します。

>歯抜く際、ミッシと音がしたので・・・・
親知らずを抜歯する際は、骨を削ったり、脱臼させたりします。その音は、下顎骨を通じ頭骨に伝わり、聴覚神経に伝わる為に、必要以上に大きな音と感じます。骨を介して伝わる音は、普通に聞こえる音以上に大きく認識します、問題ないです。

>顎等にひびなどが入って、痛むのではないかと思い、・・・
1歩譲って、顎骨に骨折などのトラブルが発生したと仮定します。
その場合でも、安静にして術後感染のコントロールを受ければ、まったく問題なく小さな骨折部位は自然治癒していきます。
ほっておいて、自然治癒しないような骨折の起こる確率はきわめて低いです。
ほんだ歯科では、毎日数件の骨の中に埋まった親知らずの抜歯を行ないますが。そのようなケースには遭遇した事はありません。
骨折に対し特別な対応をしなければならないケースでは、他の症状・・・顎の変形や、しびれ等の症状が出ます。さらに大きな炎症が発生し、このようなメールさえも書ける状態ではないでしょう。
その主治医の説明のとおりで間違いはないと思いますので、御安心ください。出された薬を確実に飲んで、安静を計ってください。

>金曜日も依然として、口を開けようとすると痛みが走ります。本当に直るか心配・・・・・

数ヶ月経っても、そのような状態であればおかしいです。
しかし、1週間くらいでは、そのようなことは特別に問題となる事ではありません。
通常抜歯部位が、完全に治癒するのに、少なくとも1ヶ月から数ヶ月は必要とします。
幸いにも、口腔内は、唾液の強力な殺菌作用と、組織の新陳代謝が早いために、治りは、他の臓器に比べて格段に速いです。

>整形外科に見てもらった方がいいのでしょうか。
その必要は、まったくありません。主治医の指示に従ってください。
自分の勝手な判断で、整形外科に行かれたとしても、整形外科は専門外になります。主治医の判断で、必要があれば口腔外科への紹介という事になりますが、その可能性は、ほとんどないと思います。御安心ください。


一般に、親知らずの抜歯は、術後感染が問題となります。
術前術後の感染防御と、術式の改良によりほとんど、不快症状なくコントロールが可能です。



もどる