1.左下奥から3番目のかぶせてある物がはずれてしまったので10年ぶりに今年の4月ころ歯医者に行きました。

2.その時はやや疲れがたまっていたので、全体的に歯茎が少し炎症をおこしており、特に左下に親不知が横向きに埋っており、隣の奥歯を圧迫していたようです。これは今までにもよく炎症をおこし、自分でも自覚しておりました。

3.レントゲンをとり下顎の左右奥に親不知がそれぞれ横向きに埋っていました。

4.先生によれば、「親不知は、歳をとっても歯茎の中でよく動くことがあり、特に横向きに生えているのは要注意だ。隣の奥歯を圧迫し、不潔になり、歯茎と顎の骨までだめにしてしまう。さらに奥歯1本抜けるとその隣もボロボロとぬけてしまう。左下の親不知は抜いといた方がよい」と勧められました。また右下の親不知については、小生が今まで何も痛くなったことがないことを訴えていましたので、特に抜く必要はないかもしれないなどと言ってました。

5.先生は若く親切のようで、全体的には抜かなければならない必要性を丁寧に説明をしてくれたような印象をもちました。これがインフォードコンセントというものだと思いますが、ただ、小生に医療の知識がないものですから、 ほおっておくと歯がボロボロ抜けていくという話を聞かされれば、同意せざるを得ませんでした。

6.手術は歯茎を斬って、親不知を半分に割ってとりだしたようです。術後の回復も比較的早かったようで、痛み等も全く残りませんでした。

7.次に先生は「右下にも横向きに親不知が埋っているので抜きます」と今度は当然のようにいってきました。痛くもないのに、その必要があるのか再度尋ねました。

8.昔から右下一番奥歯はぐらついています。それは外側・内側だけでなく左右にもぐらつくのです。先生によればこれは親不知が圧迫しているからであり、だから抜かなければならないということでした。

9.歯並びは比較的整っている方ですが、先生からレントゲン写真により右下奥から3番目くらいまでは、歯の根っこの生え方が先天的に変形していることを指摘されました。このため親不知の生え方も顎の骨に潜っているようで、大きさも可成り大きいということで、骨を削ることになり左下ように簡単にはできないだろうということでした。

10.しかし先生によれば、これまた左下と同様に放っておくと1本抜けさらに隣の1本というようにボロボロ抜けていくということで、不信感を残しながらも抜くことに同意しました。

11.手術は長時間にわたり、先生も相当悪戦苦闘していたようです。歯茎を斬ったところを縫ったということで、1週間くらいは右頬が腫れ、血腫もあるだろうということでした。実際1週間は頬に瘤ができたように、腫上がりました。

12.その後腫れが退いても、歯磨、飲食などの時に水が手術した部分に触れると、ズキンという神経に触るような重い痛みがはしり、先生によると、これは骨を削ったことからくるもので、骨が再生され皮・歯茎が被さればなおるといい、だいたい2・3ヶ月くらいかかるものだということです。

13.通院して3ヶ月経過しても、この痛みはとれません。通院する度に訴えていましたが、先生はもう少し時間がかかるのだろうということのみでした。この痛みは現在6ヶ月経過してもなくなってはいません。ただし術後と比べれば、可成り小さくなっていることは感覚的にわかります。

14.12月に入って、ようやく先生から「今回で終りだ」といわれ、やることは全てやったというような様子でし た。しかし、まだ痛みが残っていおり、また右下奥歯は術前と同様ぐらついていることもあり、通院していくうち何時かは対策を講じてくれるものと思っていましたので、ここで終だと言われても困ってしまいます。
15.ここで、再度、痛みが残ることと奥歯が依然としてぐらつくのはなぜかとということを尋ねました。

16.まず、痛みについては、またもや術後2・3ヶ月かかるとの答です。そこで、手術してからもう半年既にたっていることをいうと、驚いた様子でカルテを見て、「そういえば今年の6月でしたね」といい、首を捻りながら、あ わてながら多分考えられることは骨の先端部分は栄養が行渡りにくく、骨の再生に時間がかかるのだろうということでした。完全に手術をした時期を忘れており、それ以降小生が痛みを訴えても、聞流されていたと考えざるを得ません。

17.奥歯がぐらつくことについては、これはこの奥歯と歯茎の間にばい菌が入り歯周病または歯槽膿漏をおこしているからだという答でした。歯周病の治療には、またさらに2ヶ月くらいかかり、あなたも通院するのが大変だろうから、しばらく様子を見てからまた来てくれとのことでした。小生としては、奥歯がぐらつくのは親不知が圧迫しているからだとの先生の説明によって、抜くことを同意したと記憶しています。もし歯周病も原因していると考えられるのであれば、まず、患者の体に負担をかけない歯周病の治療を行うべきだったのではないでしょうか。

18.結局通院期間は4月から12月までで、途中9月10月は嫌になっていかなくなりましたが、計27回通院し 、金歯1本6万円を2本入れられ、親不知左右2本を抜かれた結果となりました。
小生としたは抜かれなくても良い親不知をぬかれてしまったのではないかという拭い去れない疑念と、この痛みが今後とも続き、患部などが炎症等をおこさないか等が不安であります。小生としては大病の経験がなく、身内にもあまり病人がいないので、わからないのですが、この程度ならよくあることでとるに足らないことなのでしょうか。以上

何の症状もなかった、親不知を抜く事の根拠についての判断は、歯周病を進める原因や、顎関節症の誘発原因として考えられるため抜歯の判断は、正しかったと思いますが。

その場合に、患者さんの年齢や、歯周病の状態を考慮に入れ、親不知を放置した場合に、将来的に予測される患者さん側の健康上のデメリット、及び、抜いた場合に期待できる、将来的メリットを考えて。抜歯を選択します。

さらに、その上で、抜歯による身体的外科的侵襲のよる、デメリットを考慮に入れても、抜歯する事によって受ける将来的メリットが大きい場合に限り抜歯をおこないます。

今回の事例では、いくつかの問題点があります。
まず、患者さん側に、親不知を抜歯する事の必要性について、充分な納得のいく説明が出来ていなかったこと。(少なくとも、あなたの理解は不充分であったこと)

抜歯による、危険性についての説明がなかった事。親不知の抜歯は、小手術に分類されます。
抜歯による偶発的、後遺症が発生する事があることを、承知の上で患者さんの同意を得なければなりません。その危険性を考慮に入れても、抜歯した方が、より将来健康上の恩恵がある場合のみ、抜歯適応となるからです。

抜歯後の対応の悪さ、抜歯後に残った、疼痛に対する対応が不誠実である事。このことは患者さんに不安と不信を抱かせます。さらには、十分な対応が出来ていないことが、問題かと思います。

さて、現在も続いている痛みの原因の可能性ですが、実際を診ていないので確実には判断できないのですが、将来的に炎症に波及する可能はないと思います。もし、炎症が起こるとすれば、すでに起こっているはずです。ただ、後述のとおり、手前の歯に動揺がありプラークコントロールが出来ていない場合は手前の歯からの炎症が波及する可能性はあります。

一般的な可能性について、考察してみます。

多くの場合、抜歯の際に骨を削っていますが、この骨の再生は完全には起こりません。また、再生したとしても非常に遅いです。
むしろ、傷が治っていくと、歯茎(軟組織)はすぐに再生され抜歯した穴はふさがれていくのですが、そのばあい表面の組織は収縮して治癒します。(瘢痕収縮)

抜歯後の削った骨の処理が悪いと、抜歯した周辺の骨がとがったままになっていたり、あるいは、一部がむき出しになっていたりすると、そのとがった骨を覆う表皮がひっぱられて擦れて、いつまでも、痛みが持続します。「骨鋭端」という状態がおこります。
このようなケースでは、抜歯した直後判断できないため、後日、とがった骨の一部を整形して、なだらかにします。(この手術は痛くなく短時間で終わります)そうすると、痛みはなくなります。
ただ、これに該当するのかどうかは、実際を診てみないとわかりません。

手前の歯のぐらつきは、親不知を抜いた事により、噛み合わせが変化して、より強く当たるケースでは、さらに動揺を進めることになり兼ねないので、固定する必要があるかもしれません。
手前の歯の動揺が激しい場合、根っこの周辺から、ばい菌が入り、化膿する可能性もあります。
親不知抜歯後の何らかのケアーが必要だし、少なくとも完全に抜歯後の治癒が完了するまでは、専門的プラークコントロールの必要があるもしれません。

いずれにしても、問題を抱えたまま、放置するのは良くない事です。
症状が改善しない場合さらに訴えて、相談してみてください。と中で医院を変えたり、行かなくなってしまうとうやむやになり、ますます、原因の究明や責任の所在がわからなくなります。


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