私の母の歯についての相談です。
最近、左下の一番奥の歯が飛び出してきた(3mm位)のですが、
近所の歯科医によると、噛み合うべき左上の奥歯を20年位前に抜歯したのが原因だろうとのこと。左上の隣り合った奥2本の歯に、ブリッジをかける方法を勧められました。
入れる歯の高さは、通常の半分くらいの高さのものだそうです。
(これは飛び出している分、ということなのでしょうか?)
このままだと、飛び出してきている歯が歯槽膿漏になったり、下顎を前に出す時に引っかかるようになる恐れがあるとのことなのです。
本人いわく、これまで(20年間)何ともなかったのだから、この先もこのまま放っておきたいとのことなのですが、20年以上経ってからでもトラブルが起こるということは、ありうるのでしょうか?
よろしくお願い致します。




御質問にお答えいたします。

今回は、私の母の歯についての相談です。
最近、左下の一番奥の歯が飛び出してきた(3mm位)のですが、近所の歯科医によると、噛み合うべき左上の奥歯を20年位前に抜歯したのが原因だろうとのこと。


歯は、不思議な性質があります。通常歯が伸びる場合、2通りあります。一つ目は、乳歯から、永久歯になって、大人の歯の噛み合わせができるまで。
これは、成長に伴う場合で、生理的に正常に、歯が伸びるということです。
次に、噛み合う反対の歯を(対合歯)を喪失した場合、何かにぶつかるまで、伸びていきます。
すなわち、スペースがあれば、反対側の抜け落ちてしまった、はぐきのところまで、あるいは、その抜け落ちた両隣の歯に引っかかるところまで、伸びてきます。
この時、抜け落ちた部分に、反対側の伸びた歯が入り込み、噛み合わせが、ちょうどすれ違ったようになり、すれ違い咬合と呼ばれる不正な噛み合わせになっていきます。
これは、。大変なことなんです。その部分では、まったく噛めなくなります。
従って、どこかで、、噛める部分を探して噛むために、反対側の本来正常であった噛み合わせすらも、異常になったり、負担をかけたりで、歯周病と重なり、急速に歯の正常な機能を失っていきます。
それで、本人が、いよいよ、噛めなくなってきて、歯科医院に行く気になった頃には、その歯は、完全に伸びきり根っこまで、露出してて、ついには、ぐらぐらして動揺が激しく、抜歯ぜざるを得なくなっていたりします。
反対側の噛みあわせも、極端に悪くなっていったりしてきます。しかも、口腔衛生の保持ができないために、歯周病によって、全体的にどうにもならない状態で、あったりします。とても、残念なことです。
結論としては、おっしゃるとおり、抜歯したまま、永年放置していたから、そうなったということです。

>左上の隣り合った奥2本の歯に、ブリッジをかける方法を勧められました。
>入れる歯の高さは、通常の半分くらいの高さのものだそうです。
>(これは飛び出している分、ということなのでしょうか?)


噛み合わせということは、実に大切で、歯医者さんですら、全体を見ないで、その歯だけの治療に終始するあまり、治療によって、噛み合わせに障害が出たりすることがよくあります。へぼい、歯医者にだけは、かかりたくないものです。歯医者で、治療後に噛み合わせが悪くなった経験は、ありませんか?
噛み合わせは、全体的な前後左右、上下の動きがポイントです。その場合、最も大切なことは、上顎、下顎のそれぞれの歯の表面で、作られる面(噛み合わせの、基準なる仮想平面=咬合平面呼ばれています。)が、きちっとしていること、がとても重要なのです。専門的には、まだまだ、基準や要点がありますが、ここでは、割愛します。
その平面を決定する時、1本だけ、長いと、理想的な平面を造ることができなくなります。
従って、伸び切った歯に関しては、正常な長さまで、低くする必要があります。その上で、理想的な咬合平面を造っていくわけです。

>このままだと、飛び出してきている歯が歯槽膿漏になったり、下顎を前に出す時に引っかかるようになる恐れがあるとのことなのです。

そのとおりです。まず、飛び出した歯は、噛み合う場合、ストレスになるため、無意識にそのストレスから逃れるため、奇妙な噛みあわせを、しています。結果、顎関節症を引き起こしたり、過剰な力が歯にかかるため、骨の吸収を促進し、歯槽膿漏の進行を早める結果になります。
私は、この無意識の噛み合わせ(臨床生理咬合)をとても、重要視します。
これに、異状を来すと、正しい咀嚼ができにくくなり、成人病や全身への悪影響も無症状のまま進んでいく結果となります。


>本人いわく、これまで(20年間)何ともなかったのだから、この先もこのまま
>放っておきたいとのことなのですが、20年以上経ってからでもトラブルが起こるということは、ありうるのでしょうか?


それは、その人が医学的な知識がないため、それが、後々、どういう結果をもたらすか、分かってないからです。
ちょうど、子供が、いま少し痛いけど、我慢して治療を受けたら、後々もっとすばらしい、健康があるというのが理解できないあまりに、今の治療から、逃げ出そうとするのに似ています。親は、その事を知っているため、嫌が応でも治療を受けさそうとするのに似ていますね、
それと、異常であるか、正常であるかに認識は、慢性疾患の場合本人は、とても分かりにくいのです。
ちょっと違いますが、例えば、私は、生まれつき右耳の聴力がありません。気がついたのは、精密検査を受けたからで、その後も治療法がなくて、そのままですが、まったく、正常であるという認識でいました。後年、いろんな、不便なことに気がつきましたが、そんなもんです。
ただし、逆に、難聴の人がかなり多くいらっしゃるのですが、そういう人の、不便さをよく知っていますので、治療では、人一倍、ちょっとしたしぐさで、難聴を見破ることができ、配慮できます。
噛み合わせも、一緒で、異常であっても、なんとなく、噛めてきたため(それが、医学的におかしくとも)、ある種の適応がありますので、気がつきにくいです。
少なくとも、その事によって、障害が自覚できる頃、治療は、さらに困難なことが予想され、全身への影響も大きくなっています。
20年もの間、何もなかったとお考えですけど、絶対にそんな事はありません。症状としてでなかっただけなんです。
癌にしても突然起こることはありません。ゆっくりと、無症状のまま、進むもんです。
成人病は、全部そうなんです。
そして、症状が出てきた時は、治療が難しいことが多く、完治することが困難になるのです。

考えてみれば、口はすべての入り口で、消化器官の始まりであることを認識しておいてください。口は、災いの元(ちょっと、ちゃいますね。私は、おふくろによくそう言われました(^_^””)。
胃が悪くなると、腸もおかしくなることは、経験的に誰でも理解できるのですが。口の状態が悪いと、やがては、胃も腸も、その他の器官も、影響を受けていくことは、どうも理解できていないらしいです。
口は、唯一目で見ることのできる消化器であると思います。腸の内側は、みえないでしょ?
私は、患者さんにいつも言ってます。「歯は、今日、明日の命に関係ないけど、さ〜これから、という、老後の生活の質に大きく影響を与えていきます。長生きしても、たくさんの成人病を抱えて、おいしいものも食べれなくて、幸せでしょうか?」
きちっと、自分の口の中で起こっていることを、主治医に教えてもらい、早期に治療された方がいいと思います。豊かな、老後のためです。
ただ、そこまで、どんな患者さんにも、その人の歯の状態や、今後のことについて教えてくれる先生がいらっしゃらないのが残念です。無知のまま、歯抜けになっていきます。日本の歯科医療は、遅れています。
ほんだ歯科では、一番時間を割くことなんですが、その方が、ドクターにとっても、患者さんにとっても、のちのちの付き合いの上で、楽なことなんですがね。
ほんだ歯科では、ほとんど中断されたり、予防を怠るような人は、いませんが、そして、患者さんとのトラブルも1件もありません。
所詮、患者さんの口のことは、ドクターにとっては、人事なんです。
自分の健康は、自分が守っていかなくては、いけないと思いますよ。




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