日時 : 1999年1月7日 1:22
件名 : 歯槽膿漏について。

>はじめまして。**と申します。
>わたしの会社の先輩の事で、質問をさせていただきます。
>先輩は、37才。男性です。
>3,4年前から歯槽膿漏で仕事が忙しかったり、体調が悪いとほっぺたがぷーっと膨れ、痛みもひどいらしいのですが、通っている歯医者さんでは、治療はない。と言われ、はぐきに塗る薬だけもらっているそうです。歯ブラシをよくして、歯茎を強くするしかない。と言われたそうです。(これまでに、2本歯が抜けました。)
>横で見ていてもかわいそうで、他の歯医者さんに相談することを勧めてみたのですが、痛い思いをして、治らないと言われるのが恐くて、ひたすら腫れが治まるのを我慢して待っています。
>ホントに歯槽膿漏って、治療がないのですか?
>また、痛みを和らげる薬もないのですか?
>周りの者は、ただおろおろするばかりで、全く知識がありません。
>どうか、教えてください。よろしくお願い致します。


歯槽膿漏(歯周性疾患)は、病気と言う側面と老化と言う側面を持っています。

今のそのかたの状況では、悪くなる一方であることが予想されます。

歯周性疾患は、本来、歯の周りにある溝に生息する、空気の嫌いな歯周病菌によって発生します。

この菌は、成人であれば、どの人の口にも、普通に、いつも存在する菌です。撲滅することは、不可能です。

問題は、この菌が集合した固まりになっていくことです。
はじめは、歯垢と言って歯ブラシで十分除去できるのですが、歯ブラシでは、歯と歯の間の溝や裏側などは、ブラッシングができません。
その後、食物の成分の、炭水化物の一種を吸収し石灰化(石のような構造)し、歯石となります。
歯石になると、もはや、歯ブラシでは、絶対に取れません。歯石には、莫大な量の歯周病菌が含まれ、これに抵抗するように、はぐきに血液が集中し、血液が歯周病菌と戦う状態(炎症)が起こりますが、歯周病菌の病原性が、上回り、血液の死骸や、組織の破壊産物で、満ちていき、素人の方の言う歯槽膿漏状態(専門的には、歯周性疾患と言われます)となります。

やがて、空気の嫌いな歯周病菌の固まりである、歯石は、どんどん溝深くまで到達し、歯の植わっている骨(歯槽骨)まで、破壊を受けるようになります。そのころ、歯の根っこの周りの膜(歯根膜)が、破壊を受け、噛むと痛くなり、骨が破壊を受けていくため、歯は、ぐらついていきます。

さて、この状態で、いくら歯を磨いても、だめなことが理解できると思います。なぜなら、直接的原因である、歯石は、歯ブラシでは、絶対に取れないからです。
いくら、はぐきに、薬を塗っても、何の解決にもなりません。一時的に、腫れを引かし痛みを軽減するだけで、一時凌ぎにしかなりません。後は、時間と共に悪くなる一方です。

では、どうすればいいのでしょうか?歯を抜くか、原因を完全に取っていくしかないのです。

こういう状態になって、すぐ、抜歯する歯医者は、警戒してください。私の考えでは、歯を抜くと言うことは、歯の治療をやめ、その歯に、死の宣告をすることであると考えます。後は、入れ歯なりブリッジなり、リハビリに入ります。でも、ささえにする歯も、よく似た状態であるわけですから、すぐに駄目になります。次から次へと抜かれ最終的に総入れ歯になっていきます。
こういう患者は、楽して儲けようとする一部の歯医者にとっては、まさに金のなる木、かっこうの餌食になります。

私なら、まず、徹底的に直接的原因である歯石を取っていきます。これが、実は、大変なことなんです。
こういう状態の方の歯には、はぐきの上にも(見えるところ)、はぐきの中(見えないけれども、最も有害な歯石)にも、大量に存在するからです。
時に、駄目になって腐敗してしまった、はぐきや、骨の一部も外科的に切除することも、必要となります。なぜなら、そこには、原因となる歯周病菌が膨大な量で存在するからです。

そうすれば、原因がなくなり、はぐきも腫れる必然性(炎症)がなくなり、きれいになっていきます。当然痛みも、原因がなくなるため、なくなります。
また、炎症の副産物である膿が出なくなりますから、口臭も改善されます。ぐらぐらしていた歯は、痛みがない場合は、固定して、ぐらつかないようにしておきます。
希に、失った骨が、できてきたり、組織的な結合ができてきたりして、しっかりとしてくることもあります。

問題は、これからなんです。その後、徹底的に、自己管理と専門的予防をはかります。

歯石を取り除いた、歯の周りの溝は、さらに、悪性に深くなっています。その分、そこにいる歯周病菌の量は、多いわけで、たった、一晩で、増殖し、また、歯垢を作っていき、歯石を作っていきます。これを避けることは、できません。逆に、歯周病菌に対する抵抗力は、老化や、ストレスによりますます衰えていきます。結果、そのまま放置しておくと、再発し、繰り返していきます。

従って、歯槽膿漏の状態を最もいい状態にした後、徹底的な管理が必要となります。

まず、自己管理として、日ごろ自分で、有効なブラッシング方法で、歯垢を取って頂きます。やがて、取り残しの歯垢が蓄積していきます。(この頃は、ほとんど、快適な状態で、口臭もなく自覚症状としてな、何もありません)、そしてかなり早いピッチで、(どのくらいの間隔かは、患者さんごとに違います)この、蓄積した歯垢が歯石になる前にきて頂き、深い部分の、ブラッシングで、取れなかった、歯垢(ねばねばしたものです)を、衛生士にとってもらいます。つまり、永久に、歯石を作らせないような専門管理を行ないます。

ぐらぐらだった歯も、結構しっかりとしてきます。ほとんど骨を失っていた歯も、支障なく使える間は使って頂き、痛みが出て、噛めなくなった時や、他の歯にも影響を与える場合のみ、抜歯と言うことになります。

歯ブラシだけで、歯槽膿漏にならないと思われていますが、大きな間違いです。歯石があって、歯を磨いても、何にもならないと言うことをよく理解してください。コマーシャルで、いっぱい歯を磨く画像がありますが、よく見てください。歯石は、まったくついていません。さくさく取れいるのは歯垢と言うものです。よく、どんな歯ブラシの宣伝文句にも、歯磨き剤の宣伝にも、歯石が取れると言う表現は、ありません。あれば、詐欺です。歯垢を取ると言う表現になっています。

現実に、患者さんの口を見た場合、歯石のない人は、皆無にちかいです。つまり、大部分の人にとって、いくら高い、歯ブラシや、歯磨き剤を使っても、意味のないことがご理解できると思います。

多くの人は、力いっぱい磨けばいいと思って、歯を削るくらい磨かれ、はぐきに傷をつけ、歯がくさび状にえぐれ、知覚過敏を起こされたりするのは、こういう、基本的な、知識の欠如によるものです。

それが、証拠に、大人の人で、歯を磨かない人は、一人もいないはずなのに、どうして、中年期以後に歯を失っていくのか、あるいは、歯槽膿漏になるのかを考えてください。
歯槽膿漏は、症状が出る頃は、末期的状態であり、多くの場合、歯を失う運命になります。

治療と専門的予防が必要であること。予防は、いい状態を維持するためにするものだから、理解できでいないと、なかなか歯医者に行く気になれないのですが、一度困られた方は、必ず、言わなくてもこられています。

かぜ引きの予防接種を打つ時に、まったく健康な時に行なうことを考えてください。
歯周病も同じで、治療が終了すると。終生、老化に伴う抵抗力の低下を補う意味で、快適な時に専門的な専門的予防をすることにより、再発を防ぎます。

ただ、このような、コンセプトで、保険によって治療を行なっているところは、少ないと思います。

説明に、膨大な時間が要すること、(そうでないと、患者さんは、自分の病気なのに、理解できない)、快適なのに、歯医者に定期的に行かねばならないこと。
説明に伴う保険点数がないこと、労力のわりに、コストが合わないこと。
(専門的に無知な)患者にとっても通院回数が少なく手っ取り早い方法として、抜歯して、補綴に、走った方が医院側にとっても経営的にも有利であることなどから、積極的に、真剣に取り組んでいる歯科医院は、少ないと思います。

もし、きちっと、原因である、歯石を取ったり、予防管理に対して、保険で、十分な利益が上がる保険点数制度になっていたら、どこの歯医者もそうすると思いますが...現実は、そうでは、ありません。

私は、どんな、ぐらぐらの歯であっても。何の努力も為しに、抜いてしまうのは、医学的に見放したようで、死を宣告したようで、悔しくてたまらないのですが。

歯槽膿漏で、とても状態の悪い方でも、結構、こまめに歯石を取り、専門的に管理してあげれば、いい状態で維持できるものです。
ただ、優秀な歯科衛生士の、人件費や、時間のわりに保険点数を考えるとほとんどは、採算割れします。

所詮、ドクターにとって患者さんの口は、人事であるわけですから、患者さんは、正しい知識を身につけられ、自分の歯を守る努力をして頂きたいものです。

ほんだ歯科のホームページ内には、歯周病(歯槽膿漏)に対する参考情報を多く載せております。これらを、一読され、わからないところがありましたら、またご連絡ください。




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