自律的唾液分泌機能促進訓練
舌機能促進訓練法


更新水分補給に適した推奨飲料
(2000年09月16日 )

注意

これは、ほんだ歯科の口臭外来において、口臭治療の最終プログラムとして取り入れているものです。この訓練を、専門家の指導下で行う場合、一般口臭患者のみならず、精神的要因で発生すると言われている「自臭症患者」(自覚的口臭患者)の大多数、および、唾液分泌機能障害(甲状腺機能障害・シェーグレン症候群など)を有する口臭患者においても、短期間で大きな成果が得られ、口臭に対する訴えの殆どは解決しています。

内容を見ると実に簡単な方法ですが、これが成果を上げる前提としては、口臭の直接的原因である、口腔内基礎疾患の治療が完全であること、口臭を引き起こしている基礎疾患がないこと、口臭の遠因となっている自立神経失調を引き起こす要因が改善されていて、しかも自己プラークコントロールの確立していることが必要です。

また、各機能訓練は、急がずに、体系的に行なうと、より高い効果が得られます。

意義と特徴

1. 口臭の最終治療としてのリハビリテーションとして行なうものである。
2. いつでも、だれでも、苦労せず、人に気付かれず、見た目に恥ずかしくなく、かつ継続して行うことができる。
3. とても、簡単に出来ること。
4. しばらくの訓練で、自然に行なえるようになる事。(患者さんが自律的に行なえる事。)
無意識な習慣への移行がスムーズであること。
5. ひとつの訓練で、多くの目的が達成される事(最小の努力で最大の効果を上げること)
6. 特別な器具や薬剤を使わず、費用がかからない事。(経済的)


目的と効用

1. 口臭を撲滅する為の、健全な咀嚼習慣と口腔内機能の獲得及び習慣の確立
2. 口呼吸から鼻呼吸へ、呼吸方法の転換
3. 病的、あるいは過剰な舌苔付着の完全防止と除去
4. 口腔内自浄作用・緩衝作用の復活
5. 口腔内免疫・体内免疫能の向上が図れる


理論


この方法を効果的に、かつ、能率よく行なう為には
理論を学んでください。応用が効きます。


これまでに他のページを読んで学習された方は、臭い物質のない健康な唾液が、口臭抑制に不可欠である事を理解されたと思います。

しかし、唾液分泌は、残念ながら、私達の意志ではその分泌をコントロールできない、自律神経系の支配を受けています。
しかし、ある種の唾液分泌は、舌の動きと連動しています。この働きを、意識下で能動的に行ない、唾液を自律的にコントロールする事が、この訓練法の仕組みです。

舌の動きも、基本的には無意識下の神経支配(自律神経支配)を受けているのですが、同時に自分の意識で舌を動かす事も可能です(運動神経)。

自分の舌を使って、能動的に新鮮な唾液を出しつづける事が、この訓練法の仕組みです。
新鮮で美しい、活性の高い唾液が、常に一定量舌表面を流れる状態を作り出し、口腔内の自浄性を高め、そして、口臭の元となる、口腔内からのガス揮発を抑制します。

同時に、舌の洗浄を行なって舌苔を除去し、過剰な舌苔の発生を防ぎます。
意識してこの訓練を重ねる事により、無意識のうちに口呼吸が出来なくなくなり、自動的に鼻呼吸に転換できます。少なくとも、訓練中は口呼吸が出来ません。

実践方法

この図及び唾液分泌の仕組みを参照してください。
準備 口は、完全に閉じないでください。自然態にする事。
少し開いた状態にします。(安静位)
1 口の中で「ラ」の時の舌の位置を作ります。
この時、舌の先は口の天井(天蓋)に軽く接しています。
2 「ら・ら・ら・ら・ら・ら・・・・・・・・」と激しく舌を動かしてください。発音はしなくてもいいです。これによって、唾液が沸いてきます。しかし、それでも出にくいときは。
「がらがらがらがらがらがら・・・・・・」という発音の時の舌の動き(声は出さなくていいです)をしてください。これは、さらに効果的です。
この時、舌先の動きは、らの時の天井(天蓋)に接する→下の前歯の裏にあたる
この動きの激しい連続運動になります。
さらにもっと、効果を上げるには、舌を、下の前歯の裏よりさらに下の、口の底の粘膜のくぼみ(上図-舌下小丘)付近に軽く当ててください。

舌小帯が上下する刺激で、舌下小丘に開口している唾液腺開口部から唾液が出ます。
口腔内乾燥を起こしている患者さんは、この最初の唾液を出す事が初めは困難ですが、頑張ってください。
唾液が出たら、すぐに飲み込まずに、貯めてください。
もっと、出にくい場合や、この作業を手っ取り早くする場合は、口腔内をやや吸引する感じで、陰圧にしてみてください。
3 ある程度唾液がたまると、口腔内を陰圧にしながら舌の上に唾液を乗せます。
4 舌を、でっかいチューイングガムと想像してください。
舌を口の中の天井に押しつけて、ゴシゴシします。
出きる限り色々な角度からゴシゴシして、舌を天井にこすり付けながら、表面の汚れを取ってください。
5 次に、舌の掃除を中断して、たまった唾液の半分を飲みこんでください。
この時、舌の掃除をした後の唾液が、味がついていたり、臭いがするようであれば、それが無くなるまで数回 1 から 4 のステップを繰り返します。
6 舌の掃除が終了したら(この段階では、舌の上に唾液が残っています。全部唾液を飲み干さない事が大切です。)再び 1 から 3 までのステップを行ない、舌の上に唾液を貯留します。会話する時はこの状態を作り出してから会話してください。
少しずつ、唾液を飲みます。
唾液が減少してくるたびに、間隔を置いて舌先の「らららら・・・」の運動もしくは「がらがらがら・・・」の運動を繰り返し、常に口腔内に新鮮な唾液が出るようにします。
一度、唾液がたまっていると、これは容易に出来ます。

会話中以外の時間は、出きる限り意識して1〜6の運動を続けてください。
慣れてくると無意識に出来ます。
この運動の継続により、口呼吸の防止(運動中は口呼吸が出来ない)と、口臭の発生はなくなります。


この訓練を継続して行なっていくうちに、自然にこの運動を、簡略化したり、自分なりのバリエーションを加えたりしながら、それぞれの方に独自の、やりやすい方法が身につきます。
また会話のあいだにも、ちょっとした、口腔内の舌の動きで唾液を出しつづける事が出きるようになり、以前のような、口腔内の乾燥感や口臭は減少します。



舌機能促進訓練法


目的と特徴

1. 舌の機能を低下させている、舌筋力の回復と鍛錬を行ない、咀嚼能力の改善及び唾液分泌機の促進を図る。
2. 過剰な舌苔の付着防止を図る。
3. 口腔全体にある小さな小唾液腺を刺激して、自律的唾液分泌機能促進訓練を強化する。

実践方法

これは、自律的唾液分泌機能促進訓練の中で
行ない、唾液分泌能の促進効果もあります。

自律的唾液分泌機能促進訓練中に次のような手順で、メニューを追加します。
1. 舌の先(舌尖)で左下の一番奥の歯に触れるようにします。この時、舌は左に大きくねじれています。
2. 1の状態から舌の先で、左下奥の歯から時計回りに歯の内側を左下小臼歯部→前歯→右下小臼歯部→右下奥歯の順にゆっくりとなぞっていきます。
(舌は、左に大きくねじれていた状態から、右側に回転しながら右側にねじれた状態で終わります。)
3. 右下の一番奥に触れている舌の先をそのまま持ち上げ、右上の一番奥の歯に触れます。
4. 右上の一番奥から今度は、歯に接することなく、口の中の天井部分(天蓋部分)の、最も高いところを舌先で触れるように左上奥歯までなぞって行きます。(この時、舌は右にねじれた状態から、上向きに大きく回転しながら、左側にねじれた状態で停止します。)
舌を、右上の一番奥の歯から、左の一番奥の歯に口の中の天井づたいに弓なりに移動させることになります。
5. 左上奥歯から、今度は、上の歯の内側を左奥から左上小臼歯部→前歯部→右上奥歯の順に触れていきます。
(左にねじれた舌は、上の歯の裏側を這うように右に回転します。)
6. 右上奥歯から、そのまま舌の先をまっすぐ下に移動します。右下奥歯の根っこの付け根あたりの深いところにおきます。
7. 右下奥歯の根っこあたりに舌先を強く押し当て、今度は力強く右下奥歯から右下小臼歯部→前歯→左下小臼歯部→左下奥歯の、それぞれの根っこの先付近(舌の下にある口腔底粘膜部分)をなぞっていきます。
この時、舌下小帯のつけねにある二つの舌下小丘をなぜる事が重要です。
右下にねじれた舌は、下顎の歯列弓にそって、反時計回りに左側に回転し、この運きをスタートした、元の位置に戻ります。
8. 1〜7の順に数回繰り返します。



注意
自律的唾液分泌機能促進訓練
をより効果的に実践する為に


自律的だ液分泌機能促進訓練をより効果的に行なえる為に次のことも並行してください。

唾液が出るようになれば、水分を必ず余計に補給する必要があります。

食間にコップ2杯を目安に補給してください。

1.水分を補給するタイミング

起床後のブラッシングの後
午前10時頃(朝食と昼食の中間)
午後4時頃(昼食と夕食のあいだ)
午後10時頃(夕食と就寝時のあいだ)

2.水分補給に適した推奨飲料

従来お茶や、ウーロン茶なども推奨していましたが、その後、これらのポリフェノール含有飲料は、唾液分泌を補うための水分補給としては、適していません。
むしろ、緑茶や、ウーロン茶を、たくさん飲むと逆に唾液分泌は抑制されてしまいます。
したがって、水分補給に適した材料としては、水やスポーツ飲料が適しています。

お茶や、ウーロン茶などは防臭効果がありますが、あくまでも食後や、ちょっとした緊張口臭を緩和するときに、緊張を緩和し、一時的防臭効果を期待する場合は有効です。

また、口の渇きを覚える時は、水分を飲んでください。ただしうがいは、避けてください。

うがいをすると、口腔内乾燥を助長します。




自己確認法


口臭は、自分の所属する社会の人からその指摘を受けた場合、しばしば、大きな精神的ダメージを受ける人がいます。
時に、その人の尊厳にかかわっていったり、社会生活をする上で、疎外感と、加害者意識にさいなまれ、社会生活全てに消極的になり、自閉的になっていくケースがあります。

口臭問題が解決してもなお、不安を取り除く事が出来ず、ひょっとして会話時に口臭がしたら・・・と言う不安は、なかな拭い切れない人がいるものです。このような性格はパーソナリティー(個性)として尊重し、治療する側は何らかの対応策を提示すべきです。

時に、それは、真性の心身症や、自閉症に発展するケースもあります。
口臭を克服したとしても、治療後の日々の生活において、自信を取り戻す事は、(あるいは患者さんに自信と安心を取り戻させる事は)重要なアフターケアーになります。

このような事例の患者さんへの対応として、自己確認法を取り入れています。
これは、患者さん自らが行なう、自分の口臭をチェックする方法で、もし、不快な口臭がしたら、直ちに人知れず防臭し、自信を持って会話したり、対外的活動に不安なく復帰する為の、おまけのメニューです。

方法

1. まず、不安な時に、自分の口元に手をかざし、口臭の有無を確認してください。
2. 口臭を認めたら、直ちに自律的唾液分泌機能促進訓練を数回繰り返してください。
3. 口腔内、舌の上に唾液を置いた状態で、口の中が唾液で十分湿った状態を作りだし、もう一度口臭を確認してください。
口臭がなくなるまで、上記訓練さらに、舌機能促進訓練を追加して行なってください。
必ず、口臭は消えるはずです。
理論的には、口臭を引き起こす、臭い物質の揮発が起こらないからです。
4. 会話中は、しゃべるのを一区切り終えた時、(会話における息継ぎの時)一瞬でも結構ですから、舌の前歯の裏あたりに、舌の先を触れるようにしてください。
5. 会話中に、口腔内乾燥を感じる時は、会話休止中に自律的唾液分泌機能促進運動を繰り返しておこない、舌の上に絶えず唾液があるようにしましょう。
6. 会話中は、舌機能促進訓練で鍛えた、舌の筋肉を十分に使って、舌の動きをしっかりと働かし、なるべくメリハリのある発音に心がけてください。
その方が、唾液の分泌がよく口臭を抑制できます。
7. 必要以上に、飲み水を飲んだり、うがいや歯磨きをすることはやめましょう。そのような行為は、逆に唾液の損失を招き、うがいや水を飲んだ後は唾液がなくなり、すぐに乾燥状態を引き起こします。