SST(口渇緩和ドロップ)について

口臭治療の成功秘訣は、局所的、基礎的原因の除去と合わせて、いかにして、平常時の自然唾液の確保、新鮮唾液分泌の促進を促すかがひとつの決め手になります。
私は、なるべく薬物に頼らない、自律的な訓練や、生活改善による、自律神経機能の改善によって永続的な回復を目指しています。

もちろん治療過程において、暫定的に唾液分泌を促進させるための、洗口液や、漢方を主体とした薬物療法も合わせて実施します。

アメリカの口臭外来では、むしろ、積極的な唾液分泌促進のために、薬物的治療が行なわれています。

その中で、治療のステップの、アイテムとして用いられたり、メインテナンス時の補助的な役割をになうものとして、口渇緩和ドロップが有効です。

市販の飴を舐めたり、酸味の強いドロップを舐める事でも唾液分泌は促進され口臭は抑制されますますが、口腔内phの低下による弊害も大きいので、あまり勧める事は出来ません。

口臭治療において補助的治療目的で使用するに、有効であろうと考えているSSTについて報告します。



(商品名)
SST(口渇緩和ドロップ)
(Saliv Stimulerande Tabletter)

(主成分)
甘味料:D-ソルビトール
酸味料:リンゴ酸、クエン酸
増粘料:メチルセルロース
溶剤  :プロピレングリコール
緩衝剤:燐酸カルシウム

(メーカー)
株式会社 エイコー

SSTは、口臭患者のみならず、とりわけ加齢に伴う唾液分泌量の減少、あるいはシェーグレン症候群や糖尿性高血圧症により、口渇を引き起こし口臭を呈する場合は有効です。
あるいは、極度の緊張症による(人前に出ると口臭を引き起こす)自臭患者にも有効と考えられます。
本剤の有効性については基礎的検討について若年者8名、高齢者12名を被験者として、全唾液分泌量、耳下腺唾液分泌量および、全唾液分泌量およびクリアランス能を測定し、SSTによる唾液分泌促進効果と、その有効性が示唆されています。

従来は、対症療法的に酸味のある食品の摂取による、味覚刺激、パロチンなどの薬剤の内服、人工唾液などで対応されていました。
しかし、これらの方法を口臭治療に応用する事には、限界と汎用性に乏しいと思います。

この研究によると、市販のビタミンCキャンディーによる、唾液分泌量は、SST投与時の約2倍であったが、酸味のある食品は、糖質などの う蝕誘発物質を多く含んでいるために、歯垢pHを低下させて、歯質の溶解を引き起こす可能性があるし、長期連用による味覚障害が発生する可能性があると報告しています。

また、口臭患者の多くに、飴を舐めた後の、酸性臭の訴えがあります。

この点に関し、SSTはわずかな酸味を感じさせる程度で長期の服用によっても、味覚障害や服用後の酸性の口臭を生じさせる事は少なく、さらに、緩衝剤が入っていることで、長期連用によっても歯質を溶解させない事が報告されています。

口臭治療の、途中における症状緩和目的や、治療後のメインテナンスの補助としての効果は大きいと考えられます。

(参考資料)
・口腔感想症について:卸DI実例集 No.1000 卸薬業 Vol.19.No.10.57-58:1995
・広瀬哲也,老人歯科,第7巻台2号,163-170,1998