9.エイズはこわくない
家庭の歯学 お口の健康ガイド

1.患者さんへお願いします
2.なぜ虫歯になるの?
3.なぜ歯周病になるの?
4.小さなむし歯はこう治す
5.なぜ歯を抜くの?
6.なぜクラウンやブリッジにするの?
7.なぜ義歯にするの?
8.なぜブラッシングするの?
9.エイズはこわくない
10.矯正治療とは?

〔エイズ(AIDS)とは...〕

HIV(Human Immunodeficiency Virus)というウイルスの感染によっておこる後天性免疫不全症候群(Acquired Immunodeficiency Syndrome)の略称です。潜伏期間は数カ月から数十年であり、発症すると、免疫(病気から守る力)がなくなって、健康な人なら病気を起こさないような弱い病原体でも重い病気になり、死に至る病気です。

〔エイズの感染経路〕

 エイズに感染した人は、症状があらわれていなくても、血液や精液などにウイルスが存在します。日常生活では感染しませんが、うつる可能性は次の3つの経路です。

●性行為感染
●血液を介した感染
●母子感染
 このように感染経路がはっきりしている場合には、予防することも可能です。
〔歯科医院は安全でしょうか〕
 感染経路のうち「血液を介した感染」が歯科医院で可能性のある問題だと思います。

待合室では:
 本人が自覚しているか否かにかかわらずエイズ感染者が、歯科医院で受診することは考えられます。また一見健康そうに見えても、いろいろな病気の人も来ます。病気によってはうつる可能性もあります。たとえば風邪は、唾液中にウイルスがあるので、飛沫感染でうつることもあります。一方、エイズ感染者の唾液にもウイルスはありますが、血液中と比べてもとても少なく、バケツ3杯分の唾液をあびなければうつりません。だから待合室でうつることはありません。

診療室では:
 感染経路をよく覚えておいてください。同じ椅子にすわっても感染することはありません。コップは患者ごとに交換して十分な消毒をしますので、レストランの食器より安全かもしれません。

治療中は:
 治療に使う器具は患者ごとに取り替えて、十分消毒して使用しますので、心配はありません。歯を削るハンドピースも、交互に消毒して使用しています。また、ハンドピースやバキュームの機能等については、感染防止の工夫がなされております。もっとも感染の危険性の高い注射やメスは、すべて使い捨てです。

〔歯科医院での消毒法は〕
 小さな器具は使用後、水洗洗浄後消毒されます。エイズウイルスの感染力は、B型肝炎ウイルスに比べて弱いので、消毒法はB型肝炎ウイルスに対する方法で十分です。その他機器によって、加熱滅菌、ガス滅菌、煮沸消毒、薬液消毒などが行われます。したがって通常の消毒を行っている歯科医院では、治療を介して感染することはありません。